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口唇と頬の役割
私たちは、食事を食べるときになにげに適量を噛み切り、口の中に入れ、固形物と水分が含まれた食物であっても、口の中からこぼさずに処理して飲み込んでいます。これには口唇と頬の役割が大きいのです。上口唇は鼻の下で鼻唇溝から内側の領域、頬はその外側です。下口唇はオトガイより上部の領域にあります。これらは体表面積からすると、きわめて狭い領域ですが、口唇で受け取る体性感覚は膨大です。
例えば、食物が軟らかく容易に処理できるようであれば多く一口を摂取し、硬くしっかりと噛む必要があれば少なく一口を摂取します。また、水分をこぼさずに飲めるのは、口唇(口輪筋)・頬(頬筋)の筋肉が表情筋として哺乳期から発達してきたからです。
もう一つ大切なのはこれら表情筋と咽頭の筋肉である上咽頭収縮筋が関係していることです。咽頭の筋肉は、食物を飲み込む機能には重要ですが、この筋肉が伸びてきて口元に集まる筋肉(口輪筋)によって頬(頬筋)ができてきたとも考えられています。口唇と頬はつながっているため協調して機能を発揮できるようになっています。咀嚼や嚥下機能を最大限に引き出すためには、口唇や頬を動きやすくすることが重要であると考えられます。
片麻痺で口唇の一部が動かない場合は患側の口腔前庭部に食物残渣や残薬がみられますが、口唇・頬が咽頭の筋肉とつながっていると考えると、麻痺が咽頭部にまで及んでいなくとも影響が表れると考えられます。高齢者において義歯未装着の場合は口唇・頬の筋力が十分に発揮できませんし、下顎義歯が不具合だからと装着しないでいた場合、食物残渣や薬剤が停滞することがみられます。
食物を取り込み安全に問題なく嚥下することは、これら協調した機能が果たせるからこそできるものなのです。